てふこよもやま

俳句を詠んでいる松本てふこが書いています

丸谷三砂『初葉』

「天為」で有馬朗人に師事していた作者。「パピルス」にも所属しているとのこと。「天為」、端正で知的な書き手が多くて結社誌を読むと楽しいんですけど、『初葉』はまさに「天為」の良さが凝縮された句集だなーと思いました。 装丁と栞紐のブルーが素敵。カ…

BL俳句ネプリ「彗星書架」第4号

「逆光」と「デートつて」の2作、合計10句出してます。よろしくどうぞ!参考にしてもしなくても全然大丈夫なんですが、プレイリスト作ったんで興味ある人は聴いてってください。ネプリは18日までですが、プレイリストは気が済むまで置いておきます。 「逆光…

太田かほり・八染藍子『杉山赤冨士の俳句』

原爆投下直後の広島で結社「廻廊」を立ち上げ、「戦後の広島に文芸の太い根を下ろした」(本文より)俳人・杉山赤冨士。 私はこの本で初めてその存在を知ったのですが、戦時中の句で戦局への微かな違和感を匂わせる句があったり、師事した虚子と後年距離がで…

「連句新聞」に寄稿しました

「連句新聞」2024年春号に「連句人の友人がいる俳人です」というコラムを書きました。 普段は俳句をやっている自分の、今の連句との付き合い方をざっくばらんに書いています。 Twitterで知り合って仲良くなった人が連句を頑張ってやっていて、その縁で自…

仲寒蝉『全山落葉』

今年もよろしくお願いします。地震で被災された方、お見舞い申し上げます。 自分の読書メモとして使っているので更新しました、という告知は特にしませんが、時間があって気になったら読んでください。 がまの穂と答ふがまの穂かと問はれ 小澤實の〈「はい」…

ちゅいんぐゎvol.11

中川すなを『鳳笙』

金縷梅や余りし時間あたたかき 濡れながら小鳥のくぐる時雨虹 能登に入り停車時間の刈田風 結ぶこと数かず加賀の年用意 雪吊りや毀すと決めし家に住み 旅支度七草椀を置いてより 小寒のたたむタオルの白ばかり 討死と書かれし墓標雁渡る 花活けて孤島のごと…

山岸由佳『丈夫な紙』

俳句は可愛くなければならないかもしれない〜箱森裕美『鳥と刺繍』〜 - てふこよもやま この記事で触れている読書会の準備中、あ、この句集を読むなら今では?と思い読了。 『鳥と刺繍』が特に影響を受けているんだろうなと思った句はこのあたり。 繰り返し…

俳句は可愛くなければならないかもしれない〜箱森裕美『鳥と刺繍』〜

※こちらは、以下の読書会のレジュメとして書かれたものです。ご興味がありましたら聞いてくださると嬉しいです。 【第2回 #句集読書会 のお知らせ】 11月12日(日)21時〜、箱森裕美句集『鳥と刺繍』を読むスペース配信を、@paststrangerから行います。お気…

や団のコントで俳句を詠む

キングオブコント、今年も面白かったですね。 広島にいたのですが夜はホテルでビール飲みながら観ました。 どのコンビも面白かったですが、去年からや団のコントが好きなので 「はーやっぱりすごい……」ってなりました、特に。 あの灰皿ゴトゴトゴト……ってい…

髙橋亘『機影の灯』

下萌や一弾となる騎手と馬 同姓のまた呼ばれをり春の風邪 親方の来て剪定の華やぎぬ 春寒し抜歯のガーゼ強く噛む 凩や店の名前に灯が入る 「都市」所属、第一句集。工場を描くことで現代の労働を外から描いている。 (2023年・朔出版)

栗原利代子『軟体動物』『恋雀』

ご縁があっていただきました。 面白いんじゃないかな、と思っていたら本当に面白かった! 『軟体動物』(牧羊社、1991) 足の裏掻いて淋しき月夜かな 春夕焼チューインガムの噛み疲れ 夕焼けの空を翔けたき産後かな 肛門の存在感や寒の入 紅梅や吸はれて乳の…

『汗の果実』とサッカースタジアム

あなたにとって大事な作句の場所はどこですか?と聞かれたら、多分サッカースタジアムって答えると思います。 スタジアムの中っていうか、周辺で作った句も多いです。これはここで作ったよ、という自分用のメモを兼ねて。 ※呼称は2023年6月現在のものです ※…

岡田由季『犬の眉』

新しい句集が出たので、おさらい! 作り方に癖がなくてどんな題材でもさりげなく詠んでいるのがすごい。 野球の句がちょくちょくあって、どれもあんまり緊迫してなくて好きでした。 父と子が母のこと言ふプールかな 春の野に出でて棒読みのオフィーリア かな…

#コントde短歌 の課題コントで俳句を詠む

コントは以下公式チャンネルよりご覧ください。「パフェ」https://t.co/91SFEnU6mO「関 健 ~夏祭り大乱舞篇~」https://t.co/xaQSANmkg4「田舎の家族」https://t.co/L3m98HShOB「火事」https://t.co/rZj84kpnkN#コントde短歌選者=東直子・水野葵以締切=20…

小松岬『しふくの時』読書会レジュメ……と銘打った感想メモ

『しふくの時』は「短歌研究」の新人賞発表号の際にTwitterで話題になっていて知った。所属結社でもいい歌を発表されているようだったので気になっていたが、新人賞の連作が本のかたちで読めると知ってTwililightにて購入。このレジュメは、友人たちと『しふ…

成瀬正俊『成瀬正俊集』

再読。ご縁がありまして家にあったものです。 ラグビーのぶつかつてゐる虚空かな ラグビーの句、詠むのも読むのも好きです。 観るのが好きだったら詠みやすいんだけどなあ……。 具体的な何かではなく、プレー中の雰囲気というか漂っているものを詠んでいると…

「私がマンガ編集者だった頃」10句

春めきて初校版ズレ激しかり 凸版印刷Y氏陽炎より来たる うららかや原稿取りに伊東まで 白梅の今日は出張校正に スクリーントーンのやうな春霞 明朝もゴシックも好き梅日和 目借時表紙はマット加工なり 啓蟄のどうもデータが開けぬと キスシーン長きマンガや…

(平日の)フードコートBL7句

とつぜん読みたい短詩のネプリの話をしても良いですか?次のテーマのネプリが読みたいです・女子校の王子様・ロボットとわたし・平日のフードコートBL — みやさと (@paststranger) June 5, 2022 友達がこういうことをつぶやいていて、ふーんと思って7句作り…

高野素十『初鴉』

俳句友達の一部で流行っていたので読みました。遅ればせながら十句抽きます。 (『ハイデルベルヒ』と前書きあり) 学校をなまけて春の山にくる ゆれ合へる甘茶の杓をとりにけり (『ハイデルベルヒ』と前書きあり) 枝かへてまださくらんぼ食べてをる 大い…

花火のはなし〜空気階段「花火」を見て作った俳句〜

2021年の自分にあった一番大きな変化は、芸人さんのラジオを聴いたり生まれて初めて(たぶん)お笑いのライブに行ったりするようになったこと。最初にハマったのが空気階段でした。KOC面白かったなあー。 彼らのYouTubeに上がっているコントの中で(全部観て…

野澤節子『飛泉』

浴身に氷片ふくみ夜の蟬 藤の雨足袋穿きしめて土不踏 書き更けて旅ゆくごとき足の冷え 闇よりも暁くるさびしさ水無月は さきみちてさくらあをざめゐたるかな 以下の句に「高橋悦男君、高き木へ登り揺すりて落とせしを」という前書きがあってびっくり。大学時…

女性俳人に関する他愛もない落書き①/清子、多佳子、久女

先日、ある結社のお招きで津田清子について発表してきました。学生の頃に『証言•昭和の俳句』(おもしろいです!おすすめ!)で彼女のインタビューを読んで、句も生き方も潔くて素敵!と思っていたのですが、なかなかその後深く読み込む機会がなかったんです…

湯浅洋子『浮布』

最近、90年代後半〜2000年代前半の、自分が入会する前の「童子」を読むのがめちゃめちゃ楽しくて(2018年当時)。今と雰囲気が全然違うんですけど、主宰の文章が今よりずっとキャピキャピしていたり、元気副主宰が持ち前のバイタリティでどんどん結社内での…

田代草猫『猫』

2001〜2002年ごろだったろうか、『俳句界』が「俳句界新人賞」という新人賞を運営していており、その時に受賞は逃したものの佳作か、そういった準賞のような立場で掲載されていたのが田代草猫(当時は蒼猫)だった。私が「童子」という結社を認識した、ほぼ…

小池康生『旧の渚』

現在「奎」代表として活躍中の作者。「奎」に集うメンバーはこの句集を読んだことがあるだろうか。なければ、ぜひ何らかの方法で入手するなりなんなりして欲しい。個性豊かな会員を優しく独特の距離感でまとめ上げる手腕の一端がこの第一句集で伺えるように…

小さな革命としての俳句~澤田和弥句集『革命前夜』~

※初出/「童子」2013年10月号 両手を広げて空を仰ぐ裸体の人間が重厚な色合いで描かれた表紙、鮮血をあしらい金文字を一部使用したデザイン、そういった装丁の強烈さがまず目をひく。 革命が死語となりゆく修司の忌 帯に太いフォントで刻まれたこの句のよう…

若林哲哉『掬ふ』

下に貼ったサイトでも読めるけど、句集の形で読んでみるのもオススメです。 百年俳句賞 〜『掬ふ』若林哲哉www.marukobo.com 空港と港向き合ふ良夜かな 景がわかりにくいという評もどこかで目にしましたが、そうかなあ、そこはスルッと理解できました。感覚…

大島雄作『一滴』

一句目が 手鞠つく地球しつかりしてくれよ で、ギョッとする。その次の句が 雪しんしん絵本に兎帰るころ で、あー…うー…となる。いきなりファンシーだな。困ったな…。戸惑いつつも読み進めていく。 菊人形同じ匂ひの主従なる これはなるほどと思った。「主従…

短歌をBL読みした文章①

※2018年に書いたもののお蔵出しです。ほぼ妄想です 僕たちは狂気の沙汰だ 鍵は落ちて雪の深さへ埋まっていった 千種創一 主人公は大学生くらいのカップルだ。彼らを邪魔するものはとりたてて無く、二人の間で恋が完結しきってしまい、ああ幸せだね、これ以上…