てふこよもやま

俳句を詠んでいる松本てふこが書いています

山岸由佳『丈夫な紙』

俳句は可愛くなければならないかもしれない〜箱森裕美『鳥と刺繍』〜 - てふこよもやま

この記事で触れている読書会の準備中、あ、この句集を読むなら今では?と思い読了。

『鳥と刺繍』が特に影響を受けているんだろうなと思った句はこのあたり。

繰り返し繰りかへし海月となりぬ

空港の狂はぬ時計雪催

梅一輪なんども夢に殺されて

アップルパイ雲海のなか分け合つて

水引の花ふるい服燃えやすし

 

私がいいなあと思ったのはこのあたりの句。

汗引いてゆき百年のシャンデリア

液晶の眩しき海へ秋の蚊は

うらみつらみつらつら椿柵の向う

拝観の闇に馴染んで行く春か

毛布かけ尖れる耳の舟となり

水のうへのこゑすれちがふ桜かな

 

「炎環」同人、第一句集。

(2022年・素粒社)