てふこよもやま

俳句を詠んでいる松本てふこが書いています

田代草猫『猫』

2001〜2002年ごろだったろうか、『俳句界』が「俳句界新人賞」という新人賞を運営していており、その時に受賞は逃したものの佳作か、そういった準賞のような立場で掲載されていたのが田代草猫(当時は蒼猫)だった。私が「童子」という結社を認識した、ほぼ初めての機会だったように思う。繊細でふんわりと憂愁を漂わせた作風が非常に印象に残り、後にご縁があって「童子」に入会した時に「あの人の作品が毎月読める」と密かに楽しみにしていた。

そんな彼女がついに句集を出した。

2017年の夏に送っていただき、すぐに読んで大いに楽しんだのだが、でも文庫本サイズで100ページ弱、あっという間に読み終わってしまった……という読者のわがままが先立ち、しばらく再読していなかった。

いやいや、良いですよやっぱり。すごく。

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 初夢の間一髪で死ぬところ

 布団より出し肩つめた夕霧忌

 雪代を飛べと腕を貸されたる

 花菖蒲オペラのやうに死ねなくて

 日曜より土曜日うれし浮いてこい

 海月にも吠えたきときのあるだろに

 蝶が地に止まる音して秋乾く

 湯の底に塩のかたまり終戦

 背のファスナーあげてもらひし雪女郎

 今こける今こけるぞと見てブーツ

 大寒のリカちゃんハウス牢屋めく

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